2013年12月21日土曜日

快というメッセージ(13.12.21)


 健康づくり運動に関する情報が世の中に溢れています。それを求める人の多さを反映しているということなのでしょうが、首をかしげるような情報も多く、玉石混淆の状況にあります。

 また、Aさんには適応でも、Bさんには禁忌というメソッドもあります。適度にやれば効果的でも、過剰に行えば害にもなります。さらに、強すぎても、弱すぎても効果的ではありません。・・・このように書くと「何を、どのようにすればいいの?」と、かえって混乱させてしまうかもしれません。 

 そこで私は、「自分にとって、いいものかどうかは自分のカラダに聴いてみてください」と伝えるようにしています。キーワードは「快」です。行ってみて「不快」なものは避ける。やり方次第で「快」になるならば、その方法で行う。心地よいのでもっと行いたいときは、繰り返す。カラダが繰り返しの要求をしていない場合は、やめ時と考える。・・・という具合に身体感覚を重視しながら行う方法を薦めています。ストレッチの方法をイメージするとわかりやすいかもしれません。

 理屈で考えて行うことも必要なのですが、カラダがいやがっている場合は行わない方が無難です。「食事の時間だから食べる」という行為は当たり前かもしれませんが、その時にカラダが欲しがっていないとすれば、おいしく食べることは不可能です。
 カラダの言い分に耳を傾けることは、幸せなライフスタイルの原点なのではないでしょうか。

2013年11月3日日曜日

授業直前のハプニング(13.11.03)

 某生涯学習講座で講師をしたときの話です。複数の講師によるオムニバス形式で、私は3コマを担当しました。その日は「足裏感覚からバランスを創る」というテーマを掲げていたのですが、教室に入った途端、一人の受講生から抗議を受けました。これから始まる矢先の出来事、これは初めての経験でした。
 最初は訴えの内容が把握できなかったのですが、「こういう内容なら申し込みをしなかった」というのです。よくお聞きすると「片方の足は膝から下を失っているので、足裏感覚から・・・という内容では参加しようがない」とおっしゃるのです。しかし、講師として、開始直前のこの状況では返す言葉もなく「無理をなさらずできることだけ行ってみてください」と声をかけるのが精いっぱいでした。


 間もなく実技を多く取り入れた授業が始まりましたが、その方のことが気になって仕方ありませんでした。皆さんが体を動かしているタイミングをみて「イスに座っている時は坐骨が足裏になりますよ」「寝ている時は背中全体が足裏です」「体全体のつながりを意識しがら動いて」などと、何度かその方の近くに行き、囁きました。 
90分を終えると、その方が私の方へ近づいてくるのがわかりましたが、私の前には数名の方が質問のために並んでいたため、話しかけるのをあきらめたようでした。
 その後、授業を支援して下さった先生から「その方は感謝の気持ちを伝えたかったようです」と聞かされました。ご自身でも重要な気づきがあったようです。
 「良かった」と思いました。同時に、感覚をベースに動作を再構築していくメソッドに、あらたな可能性を感じました。それは私にとっても、貴重な学びでした。

2013年10月6日日曜日

やる気を育てるスポーツ指導(13.10.06)


 それは確か1985年だったでしょうか。五輪金メダリストを育成した競泳コーチを世界中から招聘し、北の丸公園にある科学技術館を会場にした“世界競泳コーチ会議”が3日連続で開催されました。
 私も会場にいたのですが、当時は、まだそれほど知られていなかった“ラクテートアナライザー(乳酸測定器/YSI製)”とIHIと共同開発した“スイムミル”のデモンストレーターとして参加していたため、残念ながらトップコーチたちのプレゼンは全く聴くことができませんでした。 その代り、デモ現場に足を止めてくれた世界の著名コーチと直接話をするという貴重な経験をすることができました。
 その中の一人と交わした内容を今も鮮明に覚えています。彼は、ソウル五輪までの4年契約で米国から日本の某強豪クラブへ招かれた競泳コーチでした。
 「日本に来たとき、怒鳴ったり、叩いたりという選手の指導現場を見て驚きました。そんな指導法をとるならば自分は米国へ帰る」と強く抗議し、指導法を改めさせたというのです。
 「では、あなたはどんな指導をするのですか?」と訊くと、「たとえば」と前置きしながら、こんな話を聞かせてくれました。
 「選手たちは皆頑張っているけど、調子が上がらないとき、“これから練習内容を変えるので、みんなプールサイドに上がりなさい”と声をかけます」
 「“みんなはスタートが下手なので、これからスタートの練習をします”と伝え、技術解説をしながらジーパンにポロシャツ姿のままプールへ飛び込込みます。すると大きな歓声が上がります」
 「“さあ、メニューに戻るぞ”と声をかけ、練習を再開すると雰囲気が変わり皆の調子が上がっていきます」
 「そんなことよくやるのですか?」と尋ねると、笑いながら「こんなこと2回やったら面白くないでしょう」と答えました。

 “やる気を育てる指導法”については、ある程度は知っていましたが、米国コーチの指導者マインドに触れたのは、この時が初めてでした。
 このような育成法を大事にする指導者の下では体罰・暴力問題が生じることもないでしょう。 

2013年8月29日木曜日

足裏感覚から動きを創る(13.08.29)


 ヒザや腰に慢性的な痛みや違和感を抱える人にとって、椅子の立ち座り、床へのしゃがみ込み、中腰姿勢などは、できればやりたくない不快な動作なのではないでしょうか。
 腰部のスタビリティを高めることも効果的ですが、体の使い方そのものを見直すことも大切です。体の使い方はその場で変えることもできます。身体操作が変われば、即、ヒザや腰への負担感も和らぎます。さらに、それを習慣動作にしていくことで日常動作が楽になってきます。動作が楽になれば積極的なトレーニングへと進むことも容易になるでしょう。
 立位からのヒザ曲げ動作は、ヒザ関節だけが曲がることはまずありません。通常は足首とヒザと股関節が連動して曲がります。これらの関節のバランスの良い連動が、とても重要です。

 直立姿勢で足裏に意識を向け、爪先側に体重を乗せていくと、ふくらはぎや背筋など体の背面が緊張します。逆に踵側に体重を乗せていくと、太ももの前や腹筋など、体の前面が緊張します。さらに右足に体重を乗せると右のお尻や左の背筋の緊張が強くなることがわかります。足裏にかかる重さのバランスが偏ることで局所の緊張が高まるということです。
 左右均等で足裏全体にフラットに重さが乗るような感じにすると楽に立つことができます。

 例えば、コンセントを抜くような「前かがみの中腰動作」をすると、足裏の爪先側に体重がかかりやすくなります。ところが、足裏に意識を向け、フラットな接地感覚を維持しながらヒザを曲げていくと、「足首・ヒザ・股関節」が協調するようにバランスよく曲がります。局所への負担も軽減され、楽に動作することができます。
 さらに動作中、腹部に少し意識を向けることで動作が安定してきます。
 足裏感覚から様々な身体操作、身体技法の展開へと、その可能性が広がります。

2013年7月30日火曜日

私を呼びとめたのは病院長だった(13.07.30)


 某ロータリークラブから声がかかり、テーブルスピーチをしたときのことです。健康なカラダづくりをテーマに話したのですが、現代医療や病院で行われている治療に対する批判もたっぷり盛り込みました。
 食事を頂き、会場を出たところで、後ろから呼び止められました。振り向くと初老の男性が立っています。○○ですといって差し出された名刺を見ると「○○病院 院長」の肩書。

 「わっ!きついことを言い過ぎたか。クレームに違いない。ロータリークラブに医者がいてもおかしくない。出席者を確認しておけばよかった・・・・」という思いが瞬間的に頭を巡りました。
 どうやってこの場を凌ごうかと思ったその時、「とても面白かった!」という意外な言葉が返ってきたのです。テーブルスピーチでは末梢循環と病気予防の話をしたのですが、最近、病院で購入したという末梢循環測定器を用いた診断法についてアドバイスをして欲しいというのです。


 リクエストに応じ、後日、病院の定休日に訪問し、1時間半ほど、院長にレクチャーしました。不思議な光景でした。 
加速度脈波については、労働科学研究所所長(当時)の故小山内博先生に師事し学び、その時は、既に15年間以上、健康づくり相談のツールとして使用していた経験がありました。

 院長に不遜な態度などは微塵もありません。謙虚な姿勢で私の話を聞いてくれました。一通りの説明が終わり、雑談していると今度は、「実は、私は膝が痛いんです」と訴えてきました。私の行っている膝痛者へのアプローチを体験したいというのです。そこで、院長をベッドに寝かせデモンストレーションを行うという奇妙な展開になりました。
 10年前にあった本当の話です。
 こんなお医者さんもいるのですね。

2013年6月26日水曜日

うつ病患者の突然の変化(13.06.26)

 以前、独立行政法人の総合病院から、ある「うつ病患者」の体力テストをして欲しいとの依頼を受けたことがあります。「慢性疲労感がとれないのは、体力が極端に低下していることが関係しているかもしれないので、その患者の体力をチェックして欲しい」というのです。
 30代前半のその男性は、自分でクルマを運転し2時間もかけてやって来ました。とても険しい顔をしていたので、少しリラックスしてもらおうと、趣味だという釣りのことなど、何気ない会話を交わしました。しかし、重たい空気は変わらず、緊張感のある硬い表情が解けることはありませんでした。


 そして様子をみる中で何よりも気になったことは、彼の体から独特の緊張感が感じられたことです。それは、まるで心の様子を映し出しているかのような体のこわばり感とでもいうべきものです。
 体力側定の結果は、柔軟性が劣っていたわけではなく、心肺持久力も筋力系も平均的なものでした。


 測定終了後、カウンセリングルームに移動し、一対一になって体のほぐしを試みることにしました。これは医師に依頼されたプログラムではなく、あくまでも私自身の強い好奇心から行ったものです。「ほぐし」といってもマッサージのようなものではなく、操体法と呼ばれる身体バランスの回復メソッドを試みました。

 かけた時間は20分ほどでしたが、驚きました。彼の顔が別人のように変わってしまったのです。険しい表情はなくなり、口調も滑らかになりました。一動作が終わるたびに「気持ちいい」と口にし、終了後は「縛られていた体が解放されたような気分だ」と興奮気味に語りました。もちろん、もう重苦しい空気などはありません。

 心身一如という知識はもっていたものの、体を快適に導くアプローチで、短時間で心がこんなに変化するという事実を目の当たりにしたその時は、本当に驚きました。

 ストレスに晒されている多くの現代人の体も、やはり不快感という縛りから解放されたいと願っているのかも知れません。

2013年5月23日木曜日

TDLウォーキング(13.05.23)

 ディズニーランド(TDL)に「健康増進ウォーキングマップ」があることを最近知りました。以前から「ウォーキングを目的にここへ行く人はいないだろうけど、入場者は、かなり歩いているはず。誰もそれを意識していないが、結果として相当な運動量をこなしている。つまり、TDLは歩かせる仕組みでもある」と口にしていたことがあります。

 ではTDLでは、実際どのくらい歩くのか、統計資料は見つかりませんでしたが、ネットで検索した範囲での最高歩数は4万歩超。1万5千~2万歩くらい歩く人が多いようです。やはり、かなり歩いています。


 健康ウォーキングマップには、ウォーキングの運動効果、服装、水分補給などの説明があり、アトラクション間の歩数、水飲み場、パラソル・ベンチ、救護室、ロッカーの案内などが記載されています。 
こうなると、ここは最高のウォーキング環境といえるのかもしれません。マップには「パーク内のウォーキング大会を企画してみませんか」の呼び掛けもあります。

 もしかすると以前からウォーキングも目的にしながらパークを楽しんでいた人もいたのかもしれません。TDLは新たな価値訴求としてパーク内健康ウォーキングを提唱しています。

 TDLは健康増進施設でもあることを改めて認識しました。

2013年4月23日火曜日

力士の立ち座り技法(13.04.23)


 大相撲で取組前の力士が土俵前に座っているシーンをよく見ますが、力士たちはあの大きな体を、写真のように、実に合理的に操作しながら大きな座布団に腰を下ろしています。 

 逆モーションで、右端から順に写真を追うように動作をすれば一動作で立ち上がることができます。

 年配者や肥満者では、「立ち座り」や「横たわった姿勢からの立ち上がり」がスムースに行えない方も少なくありませんが、この座り方を応用すると楽に腰を下ろすことができるかもしれません。

 また、この技法を、下の写真のように、仰向けに寝た姿勢から立ち上がる動作に応用することもできます。


 座り動作も、立ちあがりも螺旋動作です。「回ってから立ち上がる」よりも「回りながら立ち上がる」方が楽に行えます。 
 この他にも局所への負担を軽減する様々な身体技法がありますが、正座や椅子からの立ち座りなど、毎日繰り返す起居動作は、いつまでも楽にスマートに行えるカラダでありたいですね。

2013年3月20日水曜日

水中では、こんな動きができます(13.03.20)


 プールでは、様々な健康づくりエクササイズが行われています。「プールは泳ぐところなので歩かないように」と注意された時代がまるでウソのようです。今やフィットネスクラブのプールではウォーキングをしている人の方が多いくらいではないでしょうか。

 水中では重力から解放されるので、関節への負担が軽減します。筋肉もリラックスし可動域も広がり、気持ちよく体を動かすことができます。ヒザに不調を抱える方も、水中では関節の負担を減らした状態でヒザ周囲の筋肉を鍛えることもできます。
 また、浮力を活用することで陸上では不可能な運動もプールでは可能となります。
 例えば、マシンジムで脚部を鍛えるレッグエクステンションやレッグカールという種目があります。このトレーニングでは、ヒザから上はイスに固定し、ヒザから下の部分だけを動かし太腿部を鍛えます。
(写真)レッグエクステンション
 

 同じレッグエクステンションやカールでも、浮具を利用し水面に体を浮かせ(浮遊位)、写真のように下腿部を固定して、ヒザの曲げ伸ばしを行うと、体全体が水面を右方向や左方向へダイナミックに滑っていきます。

(写真)浮遊位でレッグエクステンション

(写真)浮遊位でレッグカール


 そもそも固定物と接触がない状態で体を浮かせるという行為も、宇宙遊泳のように神秘的なものですが、プールの中では、陸上ではイメージできないような様々な運動を展開することができます。

2013年2月17日日曜日

効かせない筋トレも必要(13.02.17)


 ジムにいると筋トレ愛好者同士の、「このやり方は効くね」とか「効いた」という会話を耳にすることがあります。「効く」とは、本来、「効果がある」という意味ですが、この場合の「効く」とは狙った筋肉に、強い刺激を受けた感覚があることを意味しています。
 トレーニングのベテランほど効かせる技術が高く、比較的軽い重量でも効かせることができるようです。筋肉がパンパンに張った時などに「効いた!」という筋トレマニアの満足げな声が聞こえてきます。

 基本的にトレーニングは、その目的に合った方法で行う必要があります。筋肉づくりが目的であれば、確かに「効かせるトレーニング」は有効でしょう。但し、スポーツパフォーマンス向上が目的であれば、「効かせるトレーニング」ばかりを行うのは問題です。

 「効かせるトレーニングが上手い人」とは、「短時間に局所疲労を起こす人」と言い変えることができるかもしれません。しかし、スポーツシーンで、すぐに局所疲労を起こすようでは、パフォーマンスを発揮することができません。
 例えば水泳の選手が25mを泳いだ時点で、広背筋に「効いた!」と感じるようならば、当然その後は、スピードに乗った泳ぎはできないでしょう。

 スポーツパフォーマンスを考えるならば、同じ重量を上げるときでも、疲労感が少なく楽に上げられる方がいいに決まっています。局所へ効いた感じはないが、相当程度のトレーニングをこなせる体づくり。あえて、「効かせない」という技術にも注目する必要があるのではないでしょうか。
 何事にも、目的があって、そこへ到達するための手段(方法)があります。トレーニングもしかり。今やっている方法が目的に合っているかどうか、時々は、振り返ってみたいものです。

2013年1月19日土曜日

悪魔のささやき(13.01.19)


 仕事柄、年配の方と接することが多いのですが、その中で「もう年だから」という言葉を聞くことがあります。「年だから無理をしない」というのはわかりますが、「もう年なんだから」という意識が強くなると、その意識に適合するように活動量が減り、体も虚弱化に向かいます。そうなると、ますます「年なんだから」という意識が強くなり、マイナスのスパイラルに入り、終いには、生活活動も自力ではできなくなってしまう道をたどるのではないかと心配になります。

 強く思っていることや、言葉として語ったことが現実になっていくということがあります。ナポレオンヒルは「思考は現実化する」という本を書いています。マザーテレサも、思いが言葉になり、言葉が行動となり、行動は習慣となり、習慣は運命へとつながっていくということを語っています。
 スポーツの世界でも、理想の自分を明確にイメージしそこに近づけていくというトレーニング方法があります。いずれもプラスのイメージや思考から出発し、それが実現していくというものです。
 プラスの思いであれ、マイナスの思いであれ、その思いが実現化されるということであるならば、「もう年なんだから」という言葉は、悪魔のささやきといえるのかもしれません。

 今年、80歳になる三浦雄一郎さんが、3度目のエベレスト登頂を目指します。「心臓病・糖尿病を患っている80歳の爺さんがエベレストに登る、こんな面白いことはないでしょう」と笑いながらインタービューに応えていた姿が印象的でした。 この人の頭の中には、きっと「年だから楽しもうぜ、やろうぜ」というささやきが聞こえているのでしょう。