2013年6月26日水曜日

うつ病患者の突然の変化(13.06.26)

 以前、独立行政法人の総合病院から、ある「うつ病患者」の体力テストをして欲しいとの依頼を受けたことがあります。「慢性疲労感がとれないのは、体力が極端に低下していることが関係しているかもしれないので、その患者の体力をチェックして欲しい」というのです。
 30代前半のその男性は、自分でクルマを運転し2時間もかけてやって来ました。とても険しい顔をしていたので、少しリラックスしてもらおうと、趣味だという釣りのことなど、何気ない会話を交わしました。しかし、重たい空気は変わらず、緊張感のある硬い表情が解けることはありませんでした。


 そして様子をみる中で何よりも気になったことは、彼の体から独特の緊張感が感じられたことです。それは、まるで心の様子を映し出しているかのような体のこわばり感とでもいうべきものです。
 体力側定の結果は、柔軟性が劣っていたわけではなく、心肺持久力も筋力系も平均的なものでした。


 測定終了後、カウンセリングルームに移動し、一対一になって体のほぐしを試みることにしました。これは医師に依頼されたプログラムではなく、あくまでも私自身の強い好奇心から行ったものです。「ほぐし」といってもマッサージのようなものではなく、操体法と呼ばれる身体バランスの回復メソッドを試みました。

 かけた時間は20分ほどでしたが、驚きました。彼の顔が別人のように変わってしまったのです。険しい表情はなくなり、口調も滑らかになりました。一動作が終わるたびに「気持ちいい」と口にし、終了後は「縛られていた体が解放されたような気分だ」と興奮気味に語りました。もちろん、もう重苦しい空気などはありません。

 心身一如という知識はもっていたものの、体を快適に導くアプローチで、短時間で心がこんなに変化するという事実を目の当たりにしたその時は、本当に驚きました。

 ストレスに晒されている多くの現代人の体も、やはり不快感という縛りから解放されたいと願っているのかも知れません。