2013年10月6日日曜日

やる気を育てるスポーツ指導(13.10.06)


 それは確か1985年だったでしょうか。五輪金メダリストを育成した競泳コーチを世界中から招聘し、北の丸公園にある科学技術館を会場にした“世界競泳コーチ会議”が3日連続で開催されました。
 私も会場にいたのですが、当時は、まだそれほど知られていなかった“ラクテートアナライザー(乳酸測定器/YSI製)”とIHIと共同開発した“スイムミル”のデモンストレーターとして参加していたため、残念ながらトップコーチたちのプレゼンは全く聴くことができませんでした。 その代り、デモ現場に足を止めてくれた世界の著名コーチと直接話をするという貴重な経験をすることができました。
 その中の一人と交わした内容を今も鮮明に覚えています。彼は、ソウル五輪までの4年契約で米国から日本の某強豪クラブへ招かれた競泳コーチでした。
 「日本に来たとき、怒鳴ったり、叩いたりという選手の指導現場を見て驚きました。そんな指導法をとるならば自分は米国へ帰る」と強く抗議し、指導法を改めさせたというのです。
 「では、あなたはどんな指導をするのですか?」と訊くと、「たとえば」と前置きしながら、こんな話を聞かせてくれました。
 「選手たちは皆頑張っているけど、調子が上がらないとき、“これから練習内容を変えるので、みんなプールサイドに上がりなさい”と声をかけます」
 「“みんなはスタートが下手なので、これからスタートの練習をします”と伝え、技術解説をしながらジーパンにポロシャツ姿のままプールへ飛び込込みます。すると大きな歓声が上がります」
 「“さあ、メニューに戻るぞ”と声をかけ、練習を再開すると雰囲気が変わり皆の調子が上がっていきます」
 「そんなことよくやるのですか?」と尋ねると、笑いながら「こんなこと2回やったら面白くないでしょう」と答えました。

 “やる気を育てる指導法”については、ある程度は知っていましたが、米国コーチの指導者マインドに触れたのは、この時が初めてでした。
 このような育成法を大事にする指導者の下では体罰・暴力問題が生じることもないでしょう。