たとえば、成人対象のクロール指導時に、内側入水を修正しようと考え、「肩の延長線上に真っ直ぐ入水しましょう」と、何度声をかけても、フォームが改善されない可能性があります。
「どんな感じで入水していますか?」と訊くと、「肩の延長線上に入水しています」という答えが返ってくるかもしれません。そうであれば、感覚的には真っ直ぐに入水しているわけですから、「真っ直ぐに」と指摘されても、本人には修正のしようがありません。
本人の感覚をベースに考えるならば、「外側に入水しましょう」というアドバイスが功を奏するかもしれません。
(もちろん、体軸のブレが原因であったり、そのようなフォームになってしまう、その人特有の身体状況が影響していることも考えられるので、実際の対応はそれぞれのケースで異なります)
どのような言葉かけに練習者の身体が反応したのかを確認しながら、その言葉や表現法を整理し積み重ねていくことで結果を出せるコーチングへとつながっていくのではないでしょうか。
水泳に限らず、動作感覚と実際の動作との間にズレがあることは珍しくありません。そのギャップを改善するためにも、指導者は動作時の感覚を練習者と共有(共感)することに意識を向けていく必要があるのでしょう。