2010年10月4日月曜日

科学的理論の限界(10.10.04)


タイム かなり昔のことですが、競泳男子100m自由形の限界は50秒であるという、某科学者の実験データーに基づく主張がTVや新聞で紹介されたことがあります。しかし、それから間もなくして開催されたモントリオール五輪(1976年)の100m自由形決勝では、アメリカのジム・モンゴメリーが50秒の壁を破り、49秒99という記録を出して優勝しました。
 前出の科学者の説からしても、これが人類の限界かとも思われましたが、その後も記録は短縮されていくことになります。1985年には、マット・ビヨンディが49秒の壁を破り、2000年にはピーター・ファンデンホーヘンバンドが48秒の壁を破る47秒84という記録を打ち立てています。ちなみに、現在の世界記録はブラジルのシエロフィーリョの46秒91(2010年2月26日現在)。
 振り返れば、50秒限界説を唱えた科学者の論拠は何だったのかということにもなりますが、このようなことは珍しいことではないのでしょう。
 私たちは、得てして科学的理論というようなものを目の前に突き付けられると、水戸黄門の印籠のように無条件でひれ伏してしまうようなところがあります。
 科学は発展への拠り所になることは間違いありませんが、科学的知見にも優劣のレベルがあり、研究デザインや考察には限界があることも認識しておく必要があるでしょう。

2010年9月2日木曜日

親が死んでも食休み(10.09.02)

  “腹がへっては戦ができぬ” という言葉があります。空腹では力が出ないので、活動前には食事をとるべきという意味です。一方で、“親が死んでも食休み”という言い伝えもあります。消化器官に負担をかけないように、食後は休むことが重要であると訴えています。 食事・活動・休息の順番について、前者は食事→活動、後者は食事→休息とそれぞれ正反対の主張をしていることになります。

 農耕時代に現れた支配者に対して、働かされる方の被支配者は“腹がへっては戦ができぬ”と食事を要求し抵抗します。食事をとると眠くなるので、支配者は“食べてすぐ寝ると牛になる”とたしなめ、労働強化をしたという説があります。 食後は副交感神経が優位になることを考えれば、生理学的には“親が死んでも食休み”ということになりますが、空腹で低血糖状態になれば力が出せないということもあるでしょう。


食事  このようなことを考えると、栄養素やカロリーについての情報は多いのですが、それを食す時の心身の状態と栄養吸収との関係や、食事・活動・休息の順番やタイミングに関する情報がとても少ないことが気になります。

 食べて直ぐに活動したり、精神的ストレスにさらされるような状況と、楽しく食べて、食後、充分にリラックスできる状況では、同じ内容の食事であっても栄養の吸収は大きく異なるはずです。
 口に入る前のカロリーや栄養素ばかりに気をとられ過ぎると、大切なことを見失ってしまうかもしれません。

2010年8月5日木曜日

原因を排除するという考え方(10.08.05)

関節 関節をまたいで筋肉が骨についており、筋肉を縮めることで動作が起こります。したがって、しっかりと動作を行うためには、適度な筋肉の強さが必要です。このことは、筋肉を“鍛える”という発想につながります。しかし、動作に影響を及ぼす筋肉同士のバランスを調えるという発想も、忘れてはならないでしょう。

 ヒトには右利き、左利きがあり、右半身と左半身の使い方が異なります。よく使う筋肉は強くなり、使わない筋肉は弱くなります。当然の結果として「強い、弱い、柔らかい、硬い」筋肉が混在することになり、右半身と左半身、身体の前面と背面など互いに影響し合っている筋肉の強さや、柔軟性にアンバランスが生じ、ある方向には動きやすい、あるいは動きにくいなどの状況がおこります。

 誰もが、大なり小なり姿勢や動作のアンバランスを抱えています。片側半身をよく使うスポーツや、日常生活でも一方向に偏った動作を繰り返すことで、アンバランスがより鮮明になることも考えられます。このようなアンバランスを回復させる方法として、個別身体状況を考慮したオーダーメイドのストレッチやトレーニングがとても有効です。

 さらに言えば、このような対症療法的なアプローチと同時に、そこへ至った原因と考えられる動作や行為に気づき、それを排除していくという考え方も必要でしょう。
 何事にも、原因があって結果があります。原因を放置し、結果へのアプローチのみを繰り返すだけでは、何度でも元のアンバランスな状態に戻ってしまう恐れがあるからです。

2010年7月7日水曜日

1に運動、2に食事・・・(10.07.07)

 成人病から生活習慣病に名称が変わったのは、自己責任病であることを強調し 予防につなげる意図があったようですが、改称の効果はなく拡大を続けています。
 「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」という厚生労働省の予防を呼 びかける標語がありますが、運動や食習慣とともに非喫煙習慣は、スポーツクラブスタ ッフとしての当然の責務でしょう。

 さて、禁煙しようと考えている人には弾みになりそうな研究報告があります。 Surgeon  General  Report(米国軍医総監報告)によると、50歳までに禁煙す ると、65歳までの15年間で死亡のリスクが半減するそうです。年齢が高くなって も喫煙習慣をやめることによる、リスク減の効果は極めて大きいということです。
 筑波大学グループの研究でも、「10年くらいタバコを吸わないでいると、完全に吸 わない人と同じレベルに戻る」と報告されています。
タバコ
 「そんなメッセージで、タバコをやめるほど意志が弱くない」という愛煙家の声が聞 こえてきそうですが、健康支援を生業としている指導者に、喫煙ほど不釣り合いなもの はありません。

2010年6月6日日曜日

アダプテッドスポーツ(10.06.06)

 ルールや道具を障がいの種類や度合いに適合(adapt)させることによって、障がいのある人だけでなく、老若男女すべての人が楽しめるようなスポーツ活動をアダプテッドスポーツといいます。

 例えば、加齢で衰えた視力もメガネをかけると視力低下のハンディはなくなります。メガネはアダプテッド・エクイップメントであり、これにより低視力者と正常視力者が同条件となります。
水中運動

プールに入り首まで浸かると体重はわずか10%になります。低体力者、障がい者、高齢者も水中に入れば、陸上動作のハンディキャップを一気に軽くすることができます。これが、重力から解放される水中環境の大きな魅力です。
 まさに水中運動はアダプテッドエクササイズといえます。

 ※10.07.07:一部文章改変

2010年5月2日日曜日

年齢差別をご存知ですか?(10.05.02)

高齢者

「デイサービスセンターで職員が、利用者のことを『太郎さん』『花子ちゃん』と下の名前で呼んでいた。理由を聞くと、『だってかわいいから、つい親しみを込めて名前で呼びたくなった』という。(中略)
 医療現場でも、高齢者が杖をついたり車椅子に乗るようになると、赤ちゃん言葉で話しかけたり、敬語を使わず友達感覚の言葉で話しているなどの場面を見かける。・・・・」

 上の二つの例は、いずれも「エイジズムと社会福祉実践(鳥羽,2005)」という論文に掲載されたエイジズムの具体例です。エイジズムとは年齢差別のことで、年齢や高齢者に対する偏見や紋切り型の見方のことをいいます。
 日本では、まだよく知られていないようですが、アメリカではレイシズム(人種差別)、セクシズム(性差別)とともにエイジズム(年齢差別)が、三大差別の一つとして注目されているといいます。

 気がつかないまま差別行為をしている例を紹介しましたが、高齢者比率の高まっているスポーツクラブでも、起こり得る話です。若いインストラクターが友達言葉で、メンバーに声かけしているシーンは珍しくありませんが、とても違和感を覚えます。
 一人の成人した大人として接することは勿論のこと、年配者には、人生の先輩として敬意を言葉にも表し対応すべきであることはいうまでもないでしょう。