2012年10月22日月曜日

階段を後ろ向きに下りる(12.10.22)


 時々、自宅の階段を後ろ向きに下りています。股関節の動きを意識しながら、太極拳のようにゆっくりとした動作で下ります。後ろ下りでは、足首・ヒザ・股関節がうまく連動するのでヒザへの負担も小さくなります。
 さらに、殿筋群、ハムストリングス、大腿四頭筋などの下半身の大きな筋肉がエキセントリックに活動するので、加齢に伴い顕著に萎縮する白い筋肉(速筋)が刺激を受けることにもなります。


前向きに階段をゆっくり下りる方法もありますが、ヒザの動きが中心になりやすく大腿四頭筋が強く緊張し、ヒザ関節への負担も大きくなります。
実際に後ろ下りを行ってみると、意外とやりやすいことに気付きますが、転倒の危険性がないわけではないので、お勧めのエクササイズというわけにはいきません。
 後ろ下りに興味のある方には、階段のワンステップをゆっくりと上り下りする方法をお勧めします。フィットネスクラブのメンバーの方には、スタジオで行われているステップエクササイズがお勧めです。

 このエクササイズでは、前向きに上り、後ろ向きあるいは、横向きに下りる動作が基本となっているので、足首・ヒザ・股関節がよく連動して働きます。特に股関節を意識して上手に使うことがポイントといえそうです。
 この股関節動作の習得は、日常動作におけるヒザや腰への負担軽減につながるかもしれません。

2012年9月18日火曜日

姿勢チェックはさりげなく(12.09.18)


 「姿勢をチェックするので、普段通りに立ってください」と言って、正面、背面、側面から姿勢を観察し評価することがあります。しかし、「普段通りに」を強調すると、かえって特別な立ち方をしてしまいます。評価される場面なので、いい点を取ろうという意識が働くのでしょうか。
 それでも、その姿勢から緊張の強い筋肉や、弱くなっている筋肉を推測し、姿勢改善の運動処方につなげることができます。


もし、対象者がクラブメンバーの方ならば、姿勢や動作を普段から観察し、その特徴を把握しておくことで、より効果的なアドバイスができるかも知れません。
 
 国民基礎調査(2010)をみると、男性の有訴率1位は腰痛、2位が肩コリ、女性の1位は肩コリ、2位が腰痛となっており、腰痛と肩コリが上位に並んでいます。
 これら愁訴の原因は一様ではありませんが、普段の姿勢や日常動作による影響も少なくないと考えられます。
 
 肩が凝れば、マッサージやストレッチを行うなどの対症療法的な対応をすることが多いのではないでしょうか。けれども、原因を排除しているわけではないので、一時的に解放されても、悩ましい肩コリは繰り返しやってくることになります。
 「原因があって結果がある」わけですから、原因を断つことが理想です。
 
 普段の姿勢や動作に目を向けることで、通常の姿勢チェックでは見えなかった、腰痛や肩コリ等につながる大きな問題点を発見できるかも知れません。

2012年8月19日日曜日

赤ちゃんトレーニング(12.08.19)

 アテネで金を取ったハンマー投げの室伏選手が、37歳にして再びメダルを獲得しました。昨年の世界陸上でも金メダルを取りましたが、注目を集めたのが、そのトレーニング法。 赤ちゃんの動きを参考にした“赤ちゃんトレーニング”です。
 鍛え抜かれた肉体を持つアスリートが、身体的には対極にある、赤ちゃんの動きを再学習しようという発想がとても面白い。


腕や脚が未発達の赤ちゃんは、寝返り動作や、ハイハイでも上手に身体(体幹部)を使っているということがヒントになったとか。逆読みすれば、四肢の発達とともに、ヒトは上手な身体操作を忘れてしまうということになるのでしょうか。 いずれにしても、室伏選手は身体を極限まで鍛えるという方法から、赤ちゃんのように全身を上手に使うスキルを身につける方法へとシフトさせ、年齢のハンディを乗り超え、ロンドンでも大活躍したという事実に注目しています。


 最近、体幹トレーニングがとても流行っています。確かに、体幹を鍛えることは大切でしょう。けれども、その前に体幹を上手に使うという発想が必要なのではないでしょうか。体幹というより、胴体部と表現した方がいいかもしれません。

 1964年の東京オリンピック、陸上100mで優勝した米国のボブ・ヘイズの走りを見たときはビックリしました。腕・脚の動きに胴体部を見事に連動させた動きで、動物最速のチーターの胴体部の動きを連想させるような走りだったからです。ロンドンでのボルトの走りも同様でした。

 アスリートの身体パフォーマンス向上でも、高齢者の日常動作パフォーマンス改善に向けても、室伏選手が取り組んだように、原点回帰し、身体を上手に使うという発想に学ぶべき点が多いのではないかと感じています。

2012年7月22日日曜日

子どもの背中ぐにゃ(12.07.22)


 毎年、体育の日に子どもの体力低下が話題になりますが、走・跳・投の能力は1985年をピークに低下傾向が続いています。
 子どものからだの調査2010では、「背中ぐにゃ(不良姿勢)が増えている」と回答した教員が幼稚園で64%、小学校で69%いるという結果が報告されています。
 不良姿勢の子どもが増えていると感じている教員が、7割近くいるというのですから驚きです。これは、運動不足による体幹筋力・姿勢保持筋力の低下が圧倒的な数の不良姿勢の子どもをつくっている可能性を示すものかもしれません。


体幹部を鍛えて姿勢をつくる運動として、お勧めしたいのが水泳です。特に浮遊位で左右の足を素早く上下に動かすバタ足は、姿勢保持筋力の強化としては理想的な運動ではないかと考えています。
 バタ足は股関節を中心に、しなるような動きで上下動を繰り返します。背筋や腹筋群が固定力を発揮しなければ、下肢を効率的に動かすことができず、自然と体幹筋が強化されるのではないでしょうか。体幹が強化されれば軸が安定するため無駄の少ないキレイなフォームになります。

 水泳は、左右半身を均等に使うことでバランスのいい体をつくる健康運動として、子どもの背中ぐにゃを予防改善する姿勢づくり運動としても注目したいスポーツです。

2012年6月18日月曜日

無自覚的に姿勢が変わる?(12.06.18)


 授業で歩行動作について説明し、一人の男子学生をモデルとして歩かせたときのことです。歩行動作の特徴を捉えるように、見ている学生に指示し、気付いたことを言わせようとしたのですが、ほとんど意見が出てきません。
 そこでモデルの学生を10mほど歩かせ、体の傾きや、接地時間、ストライドの左右差など、特徴的な動作を解説したところ、見ている学生たちは「なるほど」という顔をしています。
 そんな特徴を捉えながら再び観察するように、学生たちに指示して、モデル学生を歩かせたところ、その学生自身の歩き方が大きく変化(改善)していました。
 「君、さっきは、そんな歩き方をしていなかったよね!」と本人に指摘すると、キョトンとした顔をしています。歩き方を変えようなどとは、意識をしていなかったというのです。


姿勢づくりの講座を担当した時のことです。3人がチームになって、1人の姿勢を2人が評価するというグループワークを行いました。
 後姿を見て「右肩が上がっている」「左腰が高い」「首が右に傾いている」「重心が片側に寄っている」など評価者の2人が指摘し合い一人の姿勢を確認していました。筆者もその様子を後ろから眺めていました。すると、評価されている人の姿勢がどんどんと変わっていくことに気がつきました。
 「あれ、姿勢が変わってきましたね」と、本人に指摘すると、「エッ、私は、何も意識していないのですが」と困惑顔。
 2人の評価者のささやきが耳に入り、その言葉を聴覚が捉え、脳が認識し、無意識下で姿勢調整が行われたのでしょうか?

 立っている人に、「両足裏に、重さを感じてください」というだけで、姿勢が改善されることもあります。「事実を客観的に認識すること」や「感覚を通して気づくこと」は、とても重要なこと。あれこれ介入するより、このような働きかけの方が、効果的な場合も、あるでしょう。

2012年5月8日火曜日

体の声を聞いてみる(12.05.08)

 「人間の覚悟」という本の中で、五木寛之が興味深いことを語っています。病院嫌いを公言し、持病の偏頭痛は、体の声に従うことで回避できるようになったといい、「痛みや炎症は冷やすか、温めるか、どちらか迷うときは、じっくり自分の体の声を聞いてみる。歩いていて苦しいならやめる、安静にしていて物足りなければ歩いてみるという具合に、体の声に従う。これらは自力でしているようでも。知識や自分の意志だけではどうにもならない働きがあるということでは、私にとって一つの他力である。」と、自身の他力思想の一端を紹介しています。


「体の声を聞いてみる」というのは、理屈や専門情報に振り回されることなく、体が何をしたがっているのか、体の訴えに耳を貸し、それに従うということです。それが病気治癒、健康づくりへつながるという考えです。
 体というのは本来、心地よさを求めるものです。ですから、体が求めている感覚に従うとは、「心地よさを求める行為」と言いかえることができるかもしれません。
 これは操体法の提唱者である故橋本敬三医師の「心地よいことは、健康づくりに有利」という考えにも重なります。逆読みすれば「不快なこと(運動)は健康づくりには不利」となります。

 「この○○という運動は良いものなのでしょうか?」という質問を受けることがあります。Aさんにとっては良い運動でも、Bさんにとっては良くない場合もあります。また、やり方によって、良かったり、悪かったりということもあるので、一概に、良い・悪いと答えることができません。
 その運動をしてみて違和感のあるときは黄色信号、痛みを感じるなど違和感の強いときは、赤信号と考えます。赤信号で突っ込めば当然、事故につながります。黄色信号も、それが体に不利に働くことを知らせています。赤も黄色も、体がその運動や動作を行うことを拒否しているのです。
 視覚情報や理屈に支配され過ぎると、そんな体の小さな声が聞こえにくくなるのかもしれません。