2014年4月6日日曜日

足首をやわらかく使うと、ヒザ曲げ動作がラクになる(14.04.06)


 厚労省研究班の調査では、ヒザ痛に悩む中高齢者は全国で1800万人。 65歳以上では3人に1人の割合。ヒザ痛者が要介護に移行するリスクは、5.7倍と試算しています。
 虚弱化した高齢者に筋トレを勧め介護予防につなげようとする考えがありますが、ヒザに痛みがあれば筋トレどころではありません。腰痛も同様ですが、痛みの緩和や不自由な日常動作を改善することが優先されるべきでしょう。

 動作意識や動作法を少し変えるだけでヒザや腰への負担が軽減され、ラクに動作できるようになることが少なくありません。例えば、ヒザを曲げる時、ヒザだけが曲がることはありません。必ず、股関節と足首が同時に動きます。ヒザの曲げ伸ばし動作では、ヒザを意識するのではなく、股関節を意識しながら上手く使えるようになると、ヒザへの負担が軽くなります。


高齢者教室などで、股関節の使い方を説明するのですが、そもそも股関節そのものが意識しづらく動作習得が難しい場合もあります。そういうケースでは、股関節を意識するのではなく、足首をやわらかく使う方法を勧めます。
 具体的には左右の足裏全体がバランスよくフラットに接地した状態を維持しながらヒザの曲げ伸ばしを行います。そうすると足首・ヒザ・股関節がバランスよく連動した動作となるのでヒザ屈伸がラクになります。

 女性ではヒザを曲げるときに、ヒザが内側に入り過ぎる人を多く見かけます。これはヒザを痛めやすい動作なので修正したいところですが、ヒザの動きだけを意識しても直すことは難しいでしょう。
 このような動作をする人は足裏の内側に体重が乗っていますので、足裏感覚からアプローチする方法が有効かもしれません。内側・外側・爪先側・踵側のいずれにも偏ることなくバランスよく足裏全体でフラットに接地しながら動作することがポイントです。そうすることで、捩じれを防ぎヒザを良い位置にキープした動作をすることができます。

2014年2月13日木曜日

上を向いて歩こう(14.02.13)

 人の呼吸はその時の感情に影響を受け変化します。怒りのときは強い呼気の連続、泣いているときは強く連続した吸気を行っています。興奮を鎮めるための深呼吸は誰もが経験していると思いますが、呼吸や形を整えることが内面にも影響します。

 呼吸とおなじように、心の様子も顔や姿勢、仕草に現れます。例えば、サッカーの試合結果で選手が皆、肩を落として、うつむき加減といった写真が掲載されれば、たとえ後姿であっても、写真だけで「負けた」ことがわかります。

 話は変わりますが、中年以上の方で坂本九が歌った “上を向いて歩こう” という曲を知らない人はいないと思います。1963年の歌ですが、米国ビルボード誌で1位を記録した、いまだに「アジア圏では唯一の曲」だそうです。
 実はこの曲は、「涙がこぼれないように上を向いて歩こう」という悲しい詞なのですが、九ちゃんが笑顔で「上を向いて・・・」と語りかけるように歌ったイメージが強く、「元気を出して、前を向いて」と呼びかけているように聞こえます。
 
ところで、「しっかり前を向く」「視線を上げる」という行為は、「自信、決意」というような力強さをイメージさせます。一方で、下を向く仕草には、「落胆、失望」といったネガティブなイメージもあります。
 この曲の快挙から半世紀が過ぎたのですが、最近は、電車のなかでも、歩いているときでも、うつむいている人が急増しています。うつむき症候群とでも名付けましょうか。うつむいた視線の先にあるのは手の中の小さな画面。便利なツールですが、何事もやり過ぎは禁物です。
 前かがみの姿勢になるとココロまで沈んでしまいます。
 さぁー、視線を上げて。

2014年1月25日土曜日

あぶない! 目の前の高齢者が・・・(14.01.25)

 パソコンを持ち込みファミレスで仕事をしていました。すると突然、大きく腰が曲がった70代半ばくらいの男性が目に入りました。左手にコーヒーカップを持ち、4m先の自分の席に戻ろうしているところでした。
 上半身は床と平行になるほど曲がり、さらに右半身にはマヒがあり、自力で歩くのは無理としか思えない様子でした。それでも特有の足運びで5cmずつ、かろうじて前に進んでいます。左手のカップは傾き、今にもこぼれそうです。

 「あぶない!」と思った瞬間、中年の女性がものすごいスピードで席から飛び出し、助けようと男性に手を伸ばしました。ところが男性は女性に向かって一喝するような強い調子で「いいです!」と制止したのです。男性は不機嫌のようにも見えました。
 驚いた女性は自分の動きに急ブレーキをかけました。「どういうこと?」とでもいいたげな困惑した表情です。
 予想外の光景でした。親切な女性に支えられて安全に歩いていく姿を周りの誰もが予想していたことでしょう。男性はその女性にお礼をいうこともありませんでした。目をやることもなく、危なげな足取りで、時間をかけて自分の席に戻って行きました。誰もが絶対にこぼれると思ったコーヒーはこぼれませんでした。


人間の身体感覚はスゴイと思いました。周囲の目とは裏腹に、男性は粗相をせずに席に戻る100%の自信があったに違いありません。
 帰り際の駐車場で、また、その男性を見かけました。おぼつかない足取りで時間をかけながらクルマに向かっています。「まさか?」と思いましたが、運転席に乗り込み、あっという間に走り去っていきました。
 不自由なカラダであっても人の手を借りず、すべてのことを自力で行うという強い決意を持って暮らしているのでしょう。
 「支え」と「自立」ということについて考えさせられた日でした。

2013年12月21日土曜日

快というメッセージ(13.12.21)


 健康づくり運動に関する情報が世の中に溢れています。それを求める人の多さを反映しているということなのでしょうが、首をかしげるような情報も多く、玉石混淆の状況にあります。

 また、Aさんには適応でも、Bさんには禁忌というメソッドもあります。適度にやれば効果的でも、過剰に行えば害にもなります。さらに、強すぎても、弱すぎても効果的ではありません。・・・このように書くと「何を、どのようにすればいいの?」と、かえって混乱させてしまうかもしれません。 

 そこで私は、「自分にとって、いいものかどうかは自分のカラダに聴いてみてください」と伝えるようにしています。キーワードは「快」です。行ってみて「不快」なものは避ける。やり方次第で「快」になるならば、その方法で行う。心地よいのでもっと行いたいときは、繰り返す。カラダが繰り返しの要求をしていない場合は、やめ時と考える。・・・という具合に身体感覚を重視しながら行う方法を薦めています。ストレッチの方法をイメージするとわかりやすいかもしれません。

 理屈で考えて行うことも必要なのですが、カラダがいやがっている場合は行わない方が無難です。「食事の時間だから食べる」という行為は当たり前かもしれませんが、その時にカラダが欲しがっていないとすれば、おいしく食べることは不可能です。
 カラダの言い分に耳を傾けることは、幸せなライフスタイルの原点なのではないでしょうか。

2013年11月3日日曜日

授業直前のハプニング(13.11.03)

 某生涯学習講座で講師をしたときの話です。複数の講師によるオムニバス形式で、私は3コマを担当しました。その日は「足裏感覚からバランスを創る」というテーマを掲げていたのですが、教室に入った途端、一人の受講生から抗議を受けました。これから始まる矢先の出来事、これは初めての経験でした。
 最初は訴えの内容が把握できなかったのですが、「こういう内容なら申し込みをしなかった」というのです。よくお聞きすると「片方の足は膝から下を失っているので、足裏感覚から・・・という内容では参加しようがない」とおっしゃるのです。しかし、講師として、開始直前のこの状況では返す言葉もなく「無理をなさらずできることだけ行ってみてください」と声をかけるのが精いっぱいでした。


 間もなく実技を多く取り入れた授業が始まりましたが、その方のことが気になって仕方ありませんでした。皆さんが体を動かしているタイミングをみて「イスに座っている時は坐骨が足裏になりますよ」「寝ている時は背中全体が足裏です」「体全体のつながりを意識しがら動いて」などと、何度かその方の近くに行き、囁きました。 
90分を終えると、その方が私の方へ近づいてくるのがわかりましたが、私の前には数名の方が質問のために並んでいたため、話しかけるのをあきらめたようでした。
 その後、授業を支援して下さった先生から「その方は感謝の気持ちを伝えたかったようです」と聞かされました。ご自身でも重要な気づきがあったようです。
 「良かった」と思いました。同時に、感覚をベースに動作を再構築していくメソッドに、あらたな可能性を感じました。それは私にとっても、貴重な学びでした。

2013年10月6日日曜日

やる気を育てるスポーツ指導(13.10.06)


 それは確か1985年だったでしょうか。五輪金メダリストを育成した競泳コーチを世界中から招聘し、北の丸公園にある科学技術館を会場にした“世界競泳コーチ会議”が3日連続で開催されました。
 私も会場にいたのですが、当時は、まだそれほど知られていなかった“ラクテートアナライザー(乳酸測定器/YSI製)”とIHIと共同開発した“スイムミル”のデモンストレーターとして参加していたため、残念ながらトップコーチたちのプレゼンは全く聴くことができませんでした。 その代り、デモ現場に足を止めてくれた世界の著名コーチと直接話をするという貴重な経験をすることができました。
 その中の一人と交わした内容を今も鮮明に覚えています。彼は、ソウル五輪までの4年契約で米国から日本の某強豪クラブへ招かれた競泳コーチでした。
 「日本に来たとき、怒鳴ったり、叩いたりという選手の指導現場を見て驚きました。そんな指導法をとるならば自分は米国へ帰る」と強く抗議し、指導法を改めさせたというのです。
 「では、あなたはどんな指導をするのですか?」と訊くと、「たとえば」と前置きしながら、こんな話を聞かせてくれました。
 「選手たちは皆頑張っているけど、調子が上がらないとき、“これから練習内容を変えるので、みんなプールサイドに上がりなさい”と声をかけます」
 「“みんなはスタートが下手なので、これからスタートの練習をします”と伝え、技術解説をしながらジーパンにポロシャツ姿のままプールへ飛び込込みます。すると大きな歓声が上がります」
 「“さあ、メニューに戻るぞ”と声をかけ、練習を再開すると雰囲気が変わり皆の調子が上がっていきます」
 「そんなことよくやるのですか?」と尋ねると、笑いながら「こんなこと2回やったら面白くないでしょう」と答えました。

 “やる気を育てる指導法”については、ある程度は知っていましたが、米国コーチの指導者マインドに触れたのは、この時が初めてでした。
 このような育成法を大事にする指導者の下では体罰・暴力問題が生じることもないでしょう。