2015年5月31日日曜日

無知の涙


 無知の涙という本をご存知でしょうか?作者は永山則夫。1997年48歳で死刑になったあの連続射殺魔の永山則夫です。
 永山は父親から育児放棄を受け、極貧の中、荒れた生活を送り学校教育を受けず、逮捕時は読み書きも満足にできなかったそうです。しかし獄中での猛烈な独学で能力を得て、執筆活動を開始。1971年には手記「無知の涙」をはじめ多くの文学作品を発表しています。そして、本の中で無知であることが凄惨な犯行につながったと振り返っています。
 ところで死因別死亡割合をみると、ガン、心疾患、脳卒中などの生活習慣病だけで全体の6割を超えていることはよく知られています。交通事故死のニュースをよく目にしますが、交通事故死者数、年間約4500人に対して、上記3つの生活習慣病による死者は63万人を超えています(平成25年)。
 原因が生活習慣にあるのが生活習慣病で、その名のとおり自分自身でつくっている病気であるいうことです。「生活習慣病は緩慢なる自殺行為である」という刺激的な表現もありますが、未だに増え続けています。
 死に至る習慣であることに実感があれば誰もここに向かっていこうとするはずがありません。知識ではわかっていても自覚症状がないため、気づいたときは手遅れという状況が多いようです。
 「知ることとは、行動も伴うことである」という考え方があります。それならば、これも「無知の涙」と表現していいのかもしれません。


2015年3月24日火曜日

「おんぶ」と「だっこ」(15.03.24)

 赤ちゃんをおんぶしている母親をみかけなくなりました。反対に「前抱き」している母親が多くなっているようです。
 ところで、妊娠を機に腰痛に悩まされる女性が多いという話を聞きます。
 妊娠中は10ヶ月かけてお腹がドンドン大きくなります。出産までに少なくても7~8kg体重が増えます。この重さに対抗するため、腰を反り、背筋を強く緊張させることになります。お腹側にかかる重さとのバランスを取るためです。
 側面のシルエットを見ると腰は大きく反り、腰椎の負担が大きな姿勢になっていることがわかります。

 やっと出産でお腹が軽くなったと思ったら、今度はその赤ちゃんを「前抱き」し、またもや腰を大きく反らせ、背筋を過剰に緊張させる生活が始まります。

 昔は「おんぶ」が当たり前でした。「おんぶ」をすることで、反り腰が緩和する方向に矯正された可能性があります。長期間の「おんぶ」は逆に腰を丸めてしまう恐れがありますが、必要な期間を「おんぶ」で過ごすことで妊娠中に形成された腰椎への過剰な負担と不良姿勢が緩和していたのかもしれません。「おんぶ」の必要な期間が過ぎれば元のニュートラルな姿勢に戻れるというプロセスです。


 あくまでも仮説の域を出ませんが、前あるいは後ろ方向に過剰な重さが加わり続ければ、姿勢が崩れ、腰椎への負担が大きくなることは間違いないでしょう。 
赤ちゃんを抱えるのは父親の仕事になっているケースもあるようですが、抱き方が一方向に偏ればやはり同じことが起こる可能性があります。
 仮説が正しければ、妊娠中に崩れた姿勢を「おんぶ」で修正するのは女性の生活行動(役割)であったといえるかもしれません。
 夫婦がともに家事労働を担当するのは、いいかもしれませんが、腰痛も公平に分散する事態を招くことは避けたいところです。

2015年2月8日日曜日

目を閉じることで見えてくるもの(15.02.08)



 人の姿勢を評価する仕事のクセが抜けず、電車で目の前に座っている人や前を歩いている人の姿勢や動作を観察することがよくあります。まさに人のカラダは千差万別、興味はつきません。
 ところで、このような動作の特徴は、当然目で捉えるものですが、実は対象者を目視しないで行うこともできます。さて、どのような方法で行うのか想像がつきますか?
 それは音を聴き分けるという方法です。例えば、自分の後ろを歩く人の靴音に耳を傾けてみます。すると、左右の靴音の大きさの違いに気づくことがあります。骨盤が左右どちらかに傾いていて一方の足(フット)がもう一方の足より床から高く浮いていて着地音が大きくなっているのかもしれません。

 また、足音のリズムの違いから左右の歩幅の違いを想像することもできます。すり足も当然音でわかります。その音からは腰が丸くなった(骨盤後傾)姿勢が想像されます。

 目視情報だけを頼りにしていると、気がつかないことかもしれませんが、目を閉じることで見えてくることも少なくありません。人間は本来精緻な五感を持っています。目もその一つですが、そこに頼りすぎていると他のセンサーの感度が鈍くなってしまうのかもしれません。

2015年1月19日月曜日

音を立てないトレーニング(15.01.19)



 ジムで筋トレをする時に「ガシャン、ガシャン」と大きな音を立てながら行っている方を見かけることがあります。重りを下げる時に力を抜いているために衝突して大きな音が出ています。
 レッグプレスのような高重量のトレーニングでこれを行うと大きな振動もともなうために周りの人もビックリしてしまいます。
 その時に「迷惑がかかるので、音を立てないでください」とは中々いいにくいものですね。
 では、どんな言い方をしたらいいのでしょうか?

「ウェイトをあげる時と戻す時では、刺激される筋肉が異なります。特に戻すときには、スピードに優れた白筋が刺激されます。白筋は年齢とともに衰えやすく、素早い動作ができないことにもつながります。ウェイトをゆっくり戻すことで白筋が鍛えられ、機敏に動ける若々しいカラダをつくることができます」と説明してはどうでしょう。
 ポジティブな表現でいかにもインストラクターらしくなるのではないでしょうか。

 マシントレーニングは安全性に優れていて簡単に行うことができます。ですが一方で姿勢を崩しながら行っていたり、持ち上げることだけがトレーニングだと考えているような人も少なくありません。
 そんな場面に遭遇したときこそ、インストラクターの出番です。丁寧に声をかけ、上手に説明してみてはどうでしょう。それはコミュニケーションを深める大きなチャンスかもしれません。

2014年11月15日土曜日

プールは万能スポーツジム(14.11.15)

 スポーツクラブのプールを利用したことのある人はわかると思いますが、一昔前と違いプールでは、泳ぐ人より、歩く人の方が多くなっています。つまりプールというのは必ずしも泳ぐための場所ではなくなっているのです。
 プールの中で音楽に合わせて行うアクアダンスも人気があります。水中で行うストレッチは、陸上よりも筋肉がゆるみやすくなるので、とても効果的です。
 また、プールでは水を抵抗にした筋力トレーニングも可能です。動くスピードを上げれば負荷は増大し、手のひらに水かきのような道具をつけて抵抗面を大きくすることでも負荷は大きくなります。
上でも、横でも、斜めでもあらゆる方向に抵抗をかけることができるのも水中筋トレの特徴でしょう。


水中であえてゆっくり動くという方法で、浮力を利用した関節モビリゼーション(関節運動)を行うこともできます。出来るだけ力を使わず関節を無理なくゆっくりと動かします。そうすることで関節内の骨同士の動きが滑らかになり、周囲の筋肉もほぐれてきます。このタイミングを逃さずストレッチに移行すると筋肉が気持ちよく伸びやすくなります。
 ただ注意しなければならないのは、プールは体温より低いので動きのないスタティックストレッチを長い時間続けていると体が冷えてしまいます。ダイナミックな動きと、うまく組み合わせる必要があるでしょう。
 膝に慢性的な痛みがある方でもプールの中では浮力が働くため、かなり楽に動くことができます。陸上の運動と組み合わせて行う「ひざ痛予防緩和プログラム」も効果的でしょう。
このように現在のプールの活用法を見てみると、「プールは万能スポーツジム」であるということができそうです。但しこのような多面的な活用法は、クラブを利用される方には常識であっても、一般的には、プールはやはり泳ぐところというイメージが強いのかもしれません。
 前回のコラムで、「水泳指導プログラムの姿勢教育としての側面」について書きましたが、今後はプールの価値を見直し、新たな視点でプールファン増を考える必要があるのかもしれません。

2014年9月19日金曜日

姿勢教育としての水泳(14.09.19)



 水中を効率的に進むための姿勢を「けのび」といいます。
 初心者水泳では、水中の基本姿勢づくりを繰り返し練習します。抵抗の少ない真っ直ぐな姿勢で水中・水面を滑っていく動作であるこの「けのび」は、とても重要な基本練習です。
 「けのび」の次のステップでは、この姿勢を維持しながらバタ足〈キック〉で進む練習をします。さらに、手の動作、呼吸動作などへとステップアップしていきます。

 ところで、最近、体幹トレーニングが注目されていますが、水泳や水泳のキック動作では体幹部の筋肉がよく使われることをご存知でしょうか。水泳は固体との接触がなく不安定な浮遊位で手足を動かさなければならないため体幹部の安定性が求められます。それは、体軸(体幹)をコントロールして抵抗の少ない水中姿勢をつくるためにも必要なことです。

 初心者の段階から取り組む「けのび」や「けのびキック」は、水中姿勢トレーニングと表現することもできるでしょう。速くキレイに泳ぐための必要条件であり、中級クラスでも上級クラスでも泳ぎの上達には重要なポイントとなります。
 水中ではスピードの二乗に比例して抵抗が増大します。速く泳げば泳ぐほど抵抗が大きくなるということです。したがって競技水泳ではいかに抵抗を排除するのかが重要になります。水中姿勢のテクニックが勝敗に大きく影響するからです。このようなことからも競泳というのは「いかに抵抗の少ない姿勢をつくれるのかを競う競技である」という見方ができるかもしれません。

 前回のコラムは「子供のロコモ」がテーマでした。不良姿勢の子どもが増えていると感じている教員が、7割近くいるという報告もあります。
 子供を取り巻く環境や身体リスクの現状を認識しながら「姿勢教育」という観点からも、「子供の水泳」をとらえる必要があるのかもしれません。