2009年2月10日火曜日

動作感覚を共有する(09.02.10)

 毎日、水泳指導に明け暮れていた頃のことを振り返ると、視覚情報に偏重していて、練習者がどのような感覚で泳いでいるのだろうかという視点が希薄でした。
 たとえば、成人対象のクロール指導時に、内側入水を修正しようと考え、「肩の延長線上に真っ直ぐ入水しましょう」と、何度声をかけても、フォームが改善されない可能性があります。

 「どんな感じで入水していますか?」と訊くと、「肩の延長線上に入水しています」という答えが返ってくるかもしれません。そうであれば、感覚的には真っ直ぐに入水しているわけですから、「真っ直ぐに」と指摘されても、本人には修正のしようがありません。
 本人の感覚をベースに考えるならば、「外側に入水しましょう」というアドバイスが功を奏するかもしれません。
(もちろん、体軸のブレが原因であったり、そのようなフォームになってしまう、その人特有の身体状況が影響していることも考えられるので、実際の対応はそれぞれのケースで異なります)


ロングスイム  指導言語に対して身体がどのように反応し、そのときの泳者の感覚はどうであったか、という確認作業は、スキル練習には大切なことだと思います。
 どのような言葉かけに練習者の身体が反応したのかを確認しながら、その言葉や表現法を整理し積み重ねていくことで結果を出せるコーチングへとつながっていくのではないでしょうか。
 水泳に限らず、動作感覚と実際の動作との間にズレがあることは珍しくありません。そのギャップを改善するためにも、指導者は動作時の感覚を練習者と共有(共感)することに意識を向けていく必要があるのでしょう。

2009年1月15日木曜日

セルフエフィカシー(09.01.15)

 難題に挑戦し成功したときに脳内快楽物質であるドーパミンがつくられ、行動が強化される(また同じ行動をしたくなる)。従って、できるかどうかわからないくらい難しい課題に挑戦しクリアしていくことが重要で、その成功により脳が喜び、強化行動がつくられるという脳科学者の本が最近、ベストセラーになりました。

 人が行動を起こすときには、大なり小なりハードルをクリアしていかなければならないというのはわかりますが、高いハードルを乗り越え続けられるのは、一部のエリートであり、万人に向けたメッセージとしては少し無理があるような気もします。
 行動を導く要素にセルフエフィカシー(自己効力感)という概念があります。「やればできるという見込み感」を表していますが、この自己効力感が強いほど新たな行動が実践される可能性が高いとされています。つまり、ハードルが高すぎてはセルフエフィカシーが低下するので行動が起こりにくくなるということです。


バランスボールでコアトレーニング  必要と思いながらも健康行動(身体活動、食習慣などライフスタイル改善)につながらない人が大勢います。エリート養成理論とは別に、セルフエフィカシーを高める条件づくり(ハードル設定)が大切なのでしょう。当然、小さなハードル越えを続ければ、大きな目標に到達することになります。

2008年12月14日日曜日

アクティブレスト(08.12.14)


 水泳は、よく有酸素運動の代表的なスポーツとしてあげられます。ランニング、自転車、と合わせてエアロビクス三大運動と称されていた時代がありました。しかし有酸素運動として陸上のウォーキングやジョギングのようにロングスイムを楽しめる人は中級者あるいは上級者に限定されます。
 つまりスキルを獲得するためのプロセスを経て有酸素運動としての水泳が可能になるということです。当然、初級クラスのような技術習得の過程では、水泳は無酸素運動の要素が強いといえます。

 25mをやっとの思いで泳ぎ終わったらハァハァと激しい息づかいの中で、コーチの説明を聞きながら、少し休んでは繰り返すというようなレッスン風景を目にすることがあります。
水中歩行 このような練習法に対して、例えば25m泳ぎ終わった後に完全休息することを避けて、泳いだ直後は25mをを歩きながら(水中ウォーキングで)スタート地点へ戻るようなレッスン形式にすれば、歩行中の筋ポンプの働きで呼吸循環器系への負担が軽減され、より効率的に疲労が回復することになります。
 このような疲労回復法をアクティブレスト(積極的休息)といいます。スイム後の歩行中にペースクロックを見ながら頚動脈に指を触れて心拍数を計ったり、運動時に感じる「つらさ」のレベルを指標にして、無理のない適切な運動強度をキープすることができるようになれば、より安全で効果的なプログラムへと発展していくのではないでしょうか。

2008年11月10日月曜日

フィジカル・アクティビティ(08.11.10)

 食べたものを記録するレコーディングダイエットが注目されましたが、毎日体重を量り、グラフ化する方法も効果的な減量法として以前から知られています。
 いずれも、事実を認識すること(気づき)から行動変容を引き出そうとする方法論ですが、「ぼんやりとそう思う」のではなく「明確に認識する」ことにポイントがありそうです。
 平成18年の国民健康・栄養調査結果を見るとこれを裏付けるようなデーターがあります。「腹囲をコントロールするために、食事や運動などの生活習慣に気をつけている者の割合」は、過去1年の間に腹囲計測をしたことのない男性では4割、腹囲計測をした男性では7割と大きな差が出ています。女性も同様に、5割に対して8割という計測の有無による大きな違いが報告されています。


チューブでボディメイク 「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」これは、生活習慣病予防に向け、運動習慣の大切さを強調した厚生労働省の標語です。
 ところでこの「運動」ですが、スポーツやフィットネスばかりではなく、「歩行」、「掃除」、「庭仕事」、「子供と遊ぶ」などの日常活動も生活習慣病予防のための身体活動(フィジカル・アクティビティ)という大きな概念で捉えようというのが、最近の健康運動の考え方です。
 誰もが取り組みやすい身体活動の代表格に、「ウォーキング」がありますが、歩数計を装着するだけで、自然と歩数が増えていきます。活動量の少ない人は、そのことを明確に認識することになるからでしょう。

2008年10月15日水曜日

スポーツ・オノマトペ(08.10.15)


 オノマトペとはフランス語が語源で、擬音語、擬態語を意味します。例えば、「ドボンと飛び込む」のドボンが擬音語で実際の音を真似たものです。「スッと入水し、グッと押さえる」などの「スッ、グッ」が擬態語で、聴覚以外の感覚を言葉に表したものです。
 つまり、五感による感覚印象を言葉で表現するものであり、運動・スポーツ領域で活用されている擬音語、擬態語をスポーツ・オノマトペといいます。
 先行研究では、スポーツ・オノマトペが運動学習に及ぼす効果として、「微妙な動作感覚、動作リズム、動作タイミングを直感的に表現できる」、「特定の抑揚による発声・音声刺激が、普段発揮することができない力を引き出す」、「動作時に発声するオノマトペの音声情報、微妙な力加減、感覚情報、音のリズムにより直感的に理解できる」という報告があります。
 表にある例を見ると、特別に意識することなしに日常的にオノマトペを使用していることに気づきますが、敢えて指導言語として意識的に用いることで、よい反応が得られるかもしれません。
 

2008年9月19日金曜日

逆もまた真なり(08.09.19)


 以前、NHKで、坂の多い長崎の住民と、平地の住民の体力を比較するという科学番組をみたことがあります。体力比較の結果、坂の多い街に住む人の方が、平地に住む人よりも優れた体力を保持しているという内容がそこでは示されていました。
 生活環境が、健康体力づくりに大きな影響を及ぼすということですが、例えば坂の上にある住居を見て、「身体に負担をかける不便な場所にある」と考える人が多いかもしれませんが、「身体が自然に鍛えられる絶好の場所にある」と考えることもできるわけです。
 利便性追求の結果、身体脆弱化傾向にある現代人は後者のようなポジティブな思考をする必要があるのかもしれません。

 逆もまた真なりといいますが、ひとつの面だけをみていると真実がぼやけてしまうことがあります。
●バリアフリー化で転等予防 → 身体を使わない環境は転等しやすい身体をつくる
●膝が痛くて歩けない → 歩かない生活習慣が膝痛をつくる
●転等予防教室 → 上手に転ぶ練習
●薬を飲んで病気治療 → 自然治癒力(免疫力)を高め病気予防
●太っているので動くのが億劫 → 動かない習慣が肥満をつくる
●ニーズをとらえた商品(マーケットイン) → 商品力がニーズを産む(プロダクトイン)

 考えると色々なことが浮かびます。必ずしも一方が正しくて、もう一方が間違っているわけではありません。二律背反が、さらなるアイデアを生む可能性もあります。固定観念にとらわれない自由な発想を心がけたいものです。(自戒を込めて)