ランチを終え階段を使って一階に下りようとしたところ、手摺りにつかまり後ろ向きに階段を下りている高齢の女性を見かけた。
昨年10月「なぜ階段は後ろ向きに下りると楽なのか?」をサブタイトルにした自著を出版した。これまで駅の階段で横向きに下りる人を何度か見かけたことがあるが、実は後ろ向きに下りる人を見たのはこの時が初めてである。
横向きに下りる人は、おそらく片側のヒザや股関節などに負担をかけたくないのだろう。片側を痛めている場合には都合のいい方法だが、もう一方のヒザには余計な負担がかかるのは仕方ないだろう。
「転倒の危険さえなければ階段は後ろ下りが楽である」と学生に言ったことがある。すると、授業後にある学生が「同居している祖母はいつも階段を後ろ向きで下りている」と教えてくれた。恐らく、この方にとってはこの方法が自力で階段を下りる唯一の方法なのだろう。
さて、冒頭の後ろ向きに下りた高齢女性は、マヒがあるようには見えなかったが平らなところでもぎこちない歩き方をしていた。
前向きに下りることができなくなった人にとって、階段というのは、とてつもないバリアである。横向きにせよ、後ろ向きにせよ自力でバリアを突破するための手段を模索した結果がその方法だったに違いない。
前向きに下りることができなくなった人にとって、階段というのは、とてつもないバリアである。横向きにせよ、後ろ向きにせよ自力でバリアを突破するための手段を模索した結果がその方法だったに違いない。
ところで、2005年に「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」というタイトルの本が出版された。会計学の本らしいが、中身は読んでいない。ただタイトルがあまりにも鮮烈だったので今だに記憶から消えない。新著にはこんなタイトルの本がいいなと漠然と考えていた。
そんな流れがあり「なぜ階段は後ろ向きに下りると楽なのか?」がサブタイトルになった。メインタイトルではインパクトが強すぎるかもしれないとサブタイトルに降格になったのだ。
おまけに前書きの後に、「階段の後ろ下りにはヒザへの負担を軽減する下半身の合理的な使い方が凝縮されていることを理解していただくためであり、日常的に後ろ下りを奨励するものではありません」と一応、PL対策のような注釈をつけた。
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