2024年4月24日水曜日

杖と手すり2

 杖と共に助けられたのが 階段に敷設された「手すり 」である。右膝の傷害を負い、左手に杖を持った身としては、やはり左側の手すりを使いたい。痛みが強い時は、強く手すりを握った。そうすると重心の位置が変わり、アンバランスに導く力が働いている事が気になった。 

20年ほど前から、歩法・走法と同様に階段を、いかに効率的(楽に)昇るか、その方法論を研究し、今もアップデートを重ねている。 しかし半月板断裂のの場合は、歩く技法では間に合わない。安静を求められる時は、当然エレベーターやエスカレーターに頼った。 


自力歩行が可能になると、ラクに行える昇降技法が奏功した。 

ところで、階段やステップの昇降時は 手すりを握らず、その名称通り軽く「すりながら」上り下りした。バランスを崩した時はすぐ握れるように「手の内」でソフトにさわるのがポイント。強く握ると重心が崩れてしまう。

様々な日常の動作にも言えることだが、それが習慣になると、左右半身や前後面の筋肉に強弱・硬軟の差(左右差・前後差)が大きくなると、骨格に歪みが生じたり、動作にアンバランスが生じる恐れもある。

 不安な時は無理をする必要がないが、固定物に軽く触れているだけで、身体は安定する。固定物がない場合は、片側の大腿部側面に軽く中指で触れながら歩くだけでも安定した歩行になる。階段昇降時も同様に動作が楽になる。

 10年前に2週間入院して 寝て過ごした後の歩行不安定期はこの歩法に助けられた。

 この負傷経験は、トレーナーとしての視点や考え方を深めることに繋がったことは、不 幸中の幸いと言えるかもしれない。(勿論、受傷したくなかったが)

2024年4月23日火曜日

杖と手すり1

今年2月に右膝のMRIで半月板断裂と診断された。何かの衝撃で痛みが出たのではない。気がついたら痛みが増悪し、まともに歩けなくなった。 杖も暫く使った。私の場合は左手(健側)で杖を持つ方法が最も痛みが軽減することもわかった。杖を使う人が思っていた以上に多いという事実にも気づいた。自らの身体状況が変わると 世の中を見る目線まで変化する。杖は痛みがある時は大変重宝であるが、使い方(多用するなど)次第で、左右の筋骨格系にアンバランスが生じて 別の運動器障害を誘発するリスクも予想される。


 訳があり、最悪の時期に 杖を着きながら遠出をした。おまけに道に迷いかなり歩いてしまった。帰路の最終段階で自宅最寄り駅からの歩行は困難を極めた。たかだか300m強の道のりは痛みとの戦い。 杖を握る手に、ありったけの力を込めながら4分の道を15分以上かけて帰宅した。 驚いたことに、一夜明け目覚めると杖を握った左中指がバネ指になっていた。 無症状の指が一夜にして変わってしまったのだ 。力はある方だが それも災いし、さらに加齢も手伝って左手中指の関節が悲鳴を上げたのだろう。 

治療についてドクターから説明を聞いた。右膝の関節左右に穴をあけ、半月板を取り出す手術療法があるが、保存療法(運動療法)を選択した。浴槽でリハトレをするなどで、 今は、下り階段は少々辛いが、平たんな道であれば普通に?歩くことができる。ドクターによれば治るのに半年は かかるらしい。つまり7月には回復するということだ。 


 ところで 2015年に「カラダ再生 動ける体のつくり方 ~なぜ階段は後ろ向きに下りると楽なのか?~」という著書を出した。 早大で授業中に学生から 「祖母は後ろ向きに降りてます」やアスリート学生から「合宿で追い込んだ最終日は、階段を前から降りられず、後ろ向きで降りた」などの声も聞いた。また、街の中で後ろ向きに階段を降りる高齢者と遭遇した事もある。
しかし、まさか自分が実生活で、必要に迫られ、後ろ向きに降りるようになるなど想像もしなかった。と同時に この技法を知っていて助かったことも事実である。 

 さて何故、断裂したのか? 

 長年の高強度トレーニングやスポーツで、かなり負担をかけ続けたことで半月板が損耗していた?そして、体調不良をきっかけに6年間の運動休止。その後、軽い「家トレ」1年継続。そして、2023年12月ジムへ入会し、7年ぶりにトレーニングを再開した。

 軽いトレーニングのつもりでも廃用性適応を経た身体(関節)には過剰負荷だった可能性もあり、半月板断裂への道は進行していたと振り返っている。 昔のように動ける感覚(実際、近い動作はできる)と、相応に変化したフィジカルとのギャップには 気づきにくいという知識はあっても、経験をしなければ、わからないことかもしれない。(続く)