2009年12月4日金曜日

“ 意識 ”がもたらすもの(09.12.04)

 筋力トレーニングでは、運動中に主働筋に意識を集中します。「活動中の筋を意識する」という行為は、筋収縮反応を高める促通刺激の一つです。促通とは、身体の中にある様々な感覚に刺激を与え、神経と筋肉のつながりをスムーズにして、筋の出力を上げることです。促通の反対は抑制で、文字通り筋の活動を抑制することであり、両者は正反対の身体反応を表現しています。
 生体に刺激を与えると、何らかの反応が現われます。筋力トレーニングは、負荷、回数、セット数、休息時間などの変数を使い分け、筋力、パワー、筋持久力向上といったそれぞれの目的に対応する身体反応を導く作業であるともいえます。
 筋肉を伸ばすという刺激も、素早く伸ばせば、伸張反射で筋肉が強く縮み(促通)、ゆっくり気持ちよく伸ばせば筋肉が弛む(抑制)という反応が起こります。ストレッチでも伸ばすスピードや強さなど、やり方によっては、異なる反応が現われるということです。従って、どのような反応を求めるのか、その目的に合う方法を選択しなければなりません。

 さて、活動筋への意識が促通につながるならば、筋緊張を抑制するために行うストレッチの指導場面でよく見られる「伸ばしている筋肉を意識しましょう・・・」という説明の仕方に矛盾はないのでしょうか?

2009年11月5日木曜日

筋のアンバランスと代償運動(09.11.05)

 人間の身体の便利さともいえますが、特定部位の筋弱化があっても隣接する筋が肩代わりして働く(代償運動)などの仕組みにより、本来ならば不自由になるはずの動作も不自由なくできてしまうことがあります。
 このような場合は本人も気がつかないまま、ある部分の機能低下が放置されてしまうことになります。バランスボールを使った難しいエクササイズでも、機能低下している部位を補う代償システムにより、上手く動作できてしまうかもしれません。

 人は得てして、トレーニングもストレッチも前後左右バランスよくやらなければならないと考えますが、筋力や柔軟性に大きな左右差や拮抗筋間のアンバランスがある場合は、弱い部分を強く、硬い部分を柔らかくするという取り組みが必要です。
 筋のアンバランスを抱えたまま、身体活動やスポーツ活動を行うことで、気がつかないうちに代償運動が強調され、弱い筋肉は機能しないまま、強い筋肉がより強く働くことで強弱・硬軟のアンバランスが鮮明になり、筋バランスがさらに大きく崩れてしまうことが考えられます。
 このようなバランス不良は、ヒザ痛、腰痛など運動器のトラブルやスポーツパフォーマンスの低下につながる可能性があるので注意が必要です。

2009年10月8日木曜日

脂肪燃焼でやせる?(09.10.08)

 減量目的の場合、「有酸素運動は20分くらい継続すると、脂肪が燃え始めるので20分以上運動しましょう。運動強度は60%程度が、脂肪が燃えやすくなります」という運動方法が紹介されることがあります。
 安静時には「糖と脂肪」が1:2の割合で使われています。強度や運動の仕方で「糖と脂肪」の消費比率は変化します。運動開始時や運動強度アップ時には糖の使用比率が高まりますが、実際には安静時でも運動時でも、常に両方のエネルギー源が使われています。

 「脂肪を減らしたいので、脂肪をエネルギーとして消費したい」という発想は理解出来ます。しかし、一般の人が減量のために運動する場合は、運動時のエネルギーが脂肪であろうが、糖であろうが結果に変わりはありません。



日本人は摂取エネルギーの6割程度を糖でとっています。総摂取カロリーを2000kcalとすれば、その内の1200kca程を糖で摂取していることになります。
 糖の体内貯蔵エネルギーは2000kcal程度です。消費分は糖の摂取で補充されますが、余剰分は脂肪に変換されます。
 仮に、脂肪を効率的に消費し、糖の消費を抑えたとしても、それは糖の体内貯蔵の減少量が小さいということであり、食事で摂った糖の余剰が増え脂肪へ変わる量が増えることを意味しています。
 体内に貯蔵された糖の消費が大きくなれば、糖の余剰による体脂肪変換量も減ることになります。つまり、糖をエネルギーとして使うことも体脂肪の減少につながるということです。
 ポイントは、消費カロリーを大きくすることであり、「脂肪燃焼」という言葉に惑わされる必要はありません。

2009年9月6日日曜日

歩行動作の分析(09.09.06)

 左右のストライドが、一歩ごとにデジタル表示されるトレッドミルを利用したときに、予想外の左右差に気がつきました。これをきっかけに、あらためて自分の歩き方を感覚で捉えながら分析してみると、

右足の接地時間の方が長く、右足を軸足にして、左足を遠くに運んでいる。
歩行中の骨盤回旋は、左よりも右回旋の方が大きい。
右足(foot)より左足の方が、地面から僅かに高く上がっている。
骨盤も左の方が右よりも僅かに上がっている。
右足荷重のタイミングで右肩が少し下がる。(=左骨盤が少し上がる)
左足に体重が乗りにくい。

 あくまでも感覚で捉えたものです。
 腸腰筋が弱くなると、脚が上がりにくくなるので、転倒のリスクが高くなるといわれます。しかし、私の場合は、左側より(腸腰筋が)強い右側の足の方が、左に比べて地面(床)に引っかかりやすいという事実があります。
 ③のとおり、右足の上がりが、左側よりも小さいので当然といえるかもしれません。左の股関節外転筋が右と比べて弱いため、左足荷重時に右の骨盤の上がり相対的に小さく、それに伴い右足の上がりも小さくなっていることが原因ではないかとみています。
あるく

歩行時の腸腰筋は、地面から離れた脚を前に振り出すフェーズ(遊脚期)では余り働かず、着地側の脚を後方に押し出すフェーズ(立脚期)の後半で最も強く活動(遠心性収縮)していたという最近の報告があります。
 これをヒントに考えれば、ストライドの大きい左足の接地時間を長くして、左中殿筋を意識するような歩行により、左股関節の伸展動作が強調され、左の腸腰筋と外転筋が強化されることになり、骨盤の水平性や、下肢動作の左右差も小さくなるのではないかと考え、歩きの中で試しています。

2009年7月31日金曜日

メタボ & ロコモ(09.07.31)

 最近、ロコモ(=ロコモティブシンドローム)という言葉を聞くようになりました。ロコモは、2007年に日本整形外科学会(日整会)が提唱したもので、「運動器の機能不全により、要介護になるリスクが高い状態になること」と定義されています。
 運動器とは、立つ、歩く、手を上げるなど、あらゆる動作を担っている筋肉・関節・骨・腱・靭帯・神経等の総称で、日常生活をおくる上で欠くことのできない器官です。

 「メタボ」は脳卒中や心筋梗塞をはじめとする生活習慣病の予防、「ロコモ」は運動器に照準をあてた介護予防につながる概念です。
 ロコモについては、日整会による以下の5つの判定指標(ロコチェック)があり、一つでも当てはまると要注意だそうです。
腰痛の高齢者
*ロコチェック
●片足立ちで靴下がはけない
●家の中でつまづいたり、滑ったりする
●階段を上るのに手すりが必要
●青信号で横断歩道を渡りきれない
●15分続けて歩けない

 メタボとロコモ、それぞれ概念は異なりますが、運動不足が大きな要因となっている点で共通しています。
 また、ヒザや腰が痛くて十分な運動ができないこと(ロコモ)から、メタボに移行することもあるでしょうし、逆に、メタボ(過体重)が原因で、活動量が減少し、ロコモ(運動器の障害)に至ることも考えられるなど、両者は大いに関連しあっているといえるかもしれません。


メタボリックファミリー A.メタボでロコモ
B.ロコモではないがメタボ
C.メタボではないがロコモ
D.メタボでもロコモでもない

 二つのキーワードを基に4通りに分類してみました。多くの中高齢者が、
A~Cに該当するのではないでしょうか?

2009年7月11日土曜日

セロトニンと呼吸(09.07.11)

 最近、過激な行動が抑えらない、いわいる「キレる」状態から様々な悲惨な事件が発生していますが、東邦医大の有田秀穂教授は、脳内のセロトニン神経が弱っていることが「キレる」原因と訴えています。
 「ラットのセロトニン神経を破壊すると、マウスを殺して食べてしまった。セロトニンを補給すると過激な症状が消えた」という怖い動物実験も報告されています。
 セロトニン神経が弱ると、うつ病、パニック障害、摂食障害などの症状があらわれ、うつ病で自殺した人の脳を調べると神経伝達物質、セロトニンの濃度が一般の人より低いことも明らかになっています。

 ところで、このセロトニン神経は、毎日の生活の中で一定時間、意識的にリズム運動を繰り返すことによって鍛えられるそうです。呼吸はリズム運動の代表格ですが、無意識に行われる呼吸では強化はできず、強化するためには、意識して深く長く息を吐き、腹筋と横隔膜に負荷をかける腹式呼吸が効果的といいます。
 お腹を凹ませながら息を吐ききり、呼気を終えると自然に吸気が行われます。効果を得るためにはこの呼吸を、毎日30分繰り返し、約100日継続することで、セロトニン神経に構造的な変化があらわれ、高い活動レベルが維持されるそうです。
 リズム運動であり呼吸に負荷がかかる水泳は、理想的な運動かもしれません。ウォーキング、ジョギング、エアロビックエクササイズや、腹式呼吸を行う座禅や太極拳などもよさそうです。

 人生はオギャーという呼吸で始まり、息を引き取ることで終焉を迎えます。まさに、「息をする」ことが「生きる」ことといえるのでしょう。
 呼吸は心理状態とも深くかかわっています。泣いている時は、強く短く連続的に吸い、怒っているときは、強く短く連続的に吐きます。気持ちが落ち着いているときはゆっくりと長い呼吸をします。意識的にこのような呼吸をすると、副交感神経が優位になり心身がリラックスします。
 「長い息」が、「長生き」に通じるといいますが、呼吸の奥深さに、ため息が出ます。