授業で歩行動作について説明し、一人の男子学生をモデルとして歩かせたときのことです。歩行動作の特徴を捉えるように、見ている学生に指示し、気付いたことを言わせようとしたのですが、ほとんど意見が出てきません。
そこでモデルの学生を10mほど歩かせ、体の傾きや、接地時間、ストライドの左右差など、特徴的な動作を解説したところ、見ている学生たちは「なるほど」という顔をしています。
そんな特徴を捉えながら再び観察するように、学生たちに指示して、モデル学生を歩かせたところ、その学生自身の歩き方が大きく変化(改善)していました。
「君、さっきは、そんな歩き方をしていなかったよね!」と本人に指摘すると、キョトンとした顔をしています。歩き方を変えようなどとは、意識をしていなかったというのです。
後姿を見て「右肩が上がっている」「左腰が高い」「首が右に傾いている」「重心が片側に寄っている」など評価者の2人が指摘し合い一人の姿勢を確認していました。筆者もその様子を後ろから眺めていました。すると、評価されている人の姿勢がどんどんと変わっていくことに気がつきました。
「あれ、姿勢が変わってきましたね」と、本人に指摘すると、「エッ、私は、何も意識していないのですが」と困惑顔。
2人の評価者のささやきが耳に入り、その言葉を聴覚が捉え、脳が認識し、無意識下で姿勢調整が行われたのでしょうか?
立っている人に、「両足裏に、重さを感じてください」というだけで、姿勢が改善されることもあります。「事実を客観的に認識すること」や「感覚を通して気づくこと」は、とても重要なこと。あれこれ介入するより、このような働きかけの方が、効果的な場合も、あるでしょう。
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