上半身は床と平行になるほど曲がり、さらに右半身にはマヒがあり、自力で歩くのは無理としか思えない様子でした。それでも特有の足運びで5cmずつ、かろうじて前に進んでいます。左手のカップは傾き、今にもこぼれそうです。
「あぶない!」と思った瞬間、中年の女性がものすごいスピードで席から飛び出し、助けようと男性に手を伸ばしました。ところが男性は女性に向かって一喝するような強い調子で「いいです!」と制止したのです。男性は不機嫌のようにも見えました。
驚いた女性は自分の動きに急ブレーキをかけました。「どういうこと?」とでもいいたげな困惑した表情です。
予想外の光景でした。親切な女性に支えられて安全に歩いていく姿を周りの誰もが予想していたことでしょう。男性はその女性にお礼をいうこともありませんでした。目をやることもなく、危なげな足取りで、時間をかけて自分の席に戻って行きました。誰もが絶対にこぼれると思ったコーヒーはこぼれませんでした。
帰り際の駐車場で、また、その男性を見かけました。おぼつかない足取りで時間をかけながらクルマに向かっています。「まさか?」と思いましたが、運転席に乗り込み、あっという間に走り去っていきました。
不自由なカラダであっても人の手を借りず、すべてのことを自力で行うという強い決意を持って暮らしているのでしょう。
「支え」と「自立」ということについて考えさせられた日でした。
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