2015年2月8日日曜日

目を閉じることで見えてくるもの(15.02.08)



 人の姿勢を評価する仕事のクセが抜けず、電車で目の前に座っている人や前を歩いている人の姿勢や動作を観察することがよくあります。まさに人のカラダは千差万別、興味はつきません。
 ところで、このような動作の特徴は、当然目で捉えるものですが、実は対象者を目視しないで行うこともできます。さて、どのような方法で行うのか想像がつきますか?
 それは音を聴き分けるという方法です。例えば、自分の後ろを歩く人の靴音に耳を傾けてみます。すると、左右の靴音の大きさの違いに気づくことがあります。骨盤が左右どちらかに傾いていて一方の足(フット)がもう一方の足より床から高く浮いていて着地音が大きくなっているのかもしれません。

 また、足音のリズムの違いから左右の歩幅の違いを想像することもできます。すり足も当然音でわかります。その音からは腰が丸くなった(骨盤後傾)姿勢が想像されます。

 目視情報だけを頼りにしていると、気がつかないことかもしれませんが、目を閉じることで見えてくることも少なくありません。人間は本来精緻な五感を持っています。目もその一つですが、そこに頼りすぎていると他のセンサーの感度が鈍くなってしまうのかもしれません。

2015年1月19日月曜日

音を立てないトレーニング(15.01.19)



 ジムで筋トレをする時に「ガシャン、ガシャン」と大きな音を立てながら行っている方を見かけることがあります。重りを下げる時に力を抜いているために衝突して大きな音が出ています。
 レッグプレスのような高重量のトレーニングでこれを行うと大きな振動もともなうために周りの人もビックリしてしまいます。
 その時に「迷惑がかかるので、音を立てないでください」とは中々いいにくいものですね。
 では、どんな言い方をしたらいいのでしょうか?

「ウェイトをあげる時と戻す時では、刺激される筋肉が異なります。特に戻すときには、スピードに優れた白筋が刺激されます。白筋は年齢とともに衰えやすく、素早い動作ができないことにもつながります。ウェイトをゆっくり戻すことで白筋が鍛えられ、機敏に動ける若々しいカラダをつくることができます」と説明してはどうでしょう。
 ポジティブな表現でいかにもインストラクターらしくなるのではないでしょうか。

 マシントレーニングは安全性に優れていて簡単に行うことができます。ですが一方で姿勢を崩しながら行っていたり、持ち上げることだけがトレーニングだと考えているような人も少なくありません。
 そんな場面に遭遇したときこそ、インストラクターの出番です。丁寧に声をかけ、上手に説明してみてはどうでしょう。それはコミュニケーションを深める大きなチャンスかもしれません。

2014年11月15日土曜日

プールは万能スポーツジム(14.11.15)

 スポーツクラブのプールを利用したことのある人はわかると思いますが、一昔前と違いプールでは、泳ぐ人より、歩く人の方が多くなっています。つまりプールというのは必ずしも泳ぐための場所ではなくなっているのです。
 プールの中で音楽に合わせて行うアクアダンスも人気があります。水中で行うストレッチは、陸上よりも筋肉がゆるみやすくなるので、とても効果的です。
 また、プールでは水を抵抗にした筋力トレーニングも可能です。動くスピードを上げれば負荷は増大し、手のひらに水かきのような道具をつけて抵抗面を大きくすることでも負荷は大きくなります。
上でも、横でも、斜めでもあらゆる方向に抵抗をかけることができるのも水中筋トレの特徴でしょう。


水中であえてゆっくり動くという方法で、浮力を利用した関節モビリゼーション(関節運動)を行うこともできます。出来るだけ力を使わず関節を無理なくゆっくりと動かします。そうすることで関節内の骨同士の動きが滑らかになり、周囲の筋肉もほぐれてきます。このタイミングを逃さずストレッチに移行すると筋肉が気持ちよく伸びやすくなります。
 ただ注意しなければならないのは、プールは体温より低いので動きのないスタティックストレッチを長い時間続けていると体が冷えてしまいます。ダイナミックな動きと、うまく組み合わせる必要があるでしょう。
 膝に慢性的な痛みがある方でもプールの中では浮力が働くため、かなり楽に動くことができます。陸上の運動と組み合わせて行う「ひざ痛予防緩和プログラム」も効果的でしょう。
このように現在のプールの活用法を見てみると、「プールは万能スポーツジム」であるということができそうです。但しこのような多面的な活用法は、クラブを利用される方には常識であっても、一般的には、プールはやはり泳ぐところというイメージが強いのかもしれません。
 前回のコラムで、「水泳指導プログラムの姿勢教育としての側面」について書きましたが、今後はプールの価値を見直し、新たな視点でプールファン増を考える必要があるのかもしれません。

2014年9月19日金曜日

姿勢教育としての水泳(14.09.19)



 水中を効率的に進むための姿勢を「けのび」といいます。
 初心者水泳では、水中の基本姿勢づくりを繰り返し練習します。抵抗の少ない真っ直ぐな姿勢で水中・水面を滑っていく動作であるこの「けのび」は、とても重要な基本練習です。
 「けのび」の次のステップでは、この姿勢を維持しながらバタ足〈キック〉で進む練習をします。さらに、手の動作、呼吸動作などへとステップアップしていきます。

 ところで、最近、体幹トレーニングが注目されていますが、水泳や水泳のキック動作では体幹部の筋肉がよく使われることをご存知でしょうか。水泳は固体との接触がなく不安定な浮遊位で手足を動かさなければならないため体幹部の安定性が求められます。それは、体軸(体幹)をコントロールして抵抗の少ない水中姿勢をつくるためにも必要なことです。

 初心者の段階から取り組む「けのび」や「けのびキック」は、水中姿勢トレーニングと表現することもできるでしょう。速くキレイに泳ぐための必要条件であり、中級クラスでも上級クラスでも泳ぎの上達には重要なポイントとなります。
 水中ではスピードの二乗に比例して抵抗が増大します。速く泳げば泳ぐほど抵抗が大きくなるということです。したがって競技水泳ではいかに抵抗を排除するのかが重要になります。水中姿勢のテクニックが勝敗に大きく影響するからです。このようなことからも競泳というのは「いかに抵抗の少ない姿勢をつくれるのかを競う競技である」という見方ができるかもしれません。

 前回のコラムは「子供のロコモ」がテーマでした。不良姿勢の子どもが増えていると感じている教員が、7割近くいるという報告もあります。
 子供を取り巻く環境や身体リスクの現状を認識しながら「姿勢教育」という観点からも、「子供の水泳」をとらえる必要があるのかもしれません。

2014年8月27日水曜日

子供のロコモ?!(14.08.27)


 筋肉や骨や関節など体を動かす器官を運動器といいます。運動器に何らかの問題(障害)があると、スポーツ動作はもちろんのこと日常動作もその影響を受けることになります。それが進行していき、1人で椅子から立ち上がれないとなれば、人の手が必要になります。つまり、要支援、要介護への道が始まるとことを意味します。
 このように、運動器に問題を抱えており、将来寝たきりになるリスクが高い状態にあることを「ロコモティブシンドローム」、通称「ロコモ」といいます。


 ロコモはあくまでも、「QOL維持向上のためには運動器を健全に保ちましょう」という中高年へのメッセージと考えていました。
 ところが最近は、「片脚でしっかり立つ、手を真っ直ぐに上げる、しゃがみ込む」というような基本動作ができない子供が急増していると聞きます。
 雑巾がけをしても腕で支えることができず、顔から落ちていく子供がいることなど昔では考えられなかったことです。このような子供のロコモ予備群化ともいうべき問題は確実に広がっているようです。

 姿勢の崩れた子供が増えていることは、以前から気になっていました。これも一連の運動器トラブルの一つといえるでしょう。ゲーム、スマホ、塾通い(=長時間座位の増加)は子供のスタンダードライフになっています。よい姿勢づくり(筋骨格系統のバランスいい発育発達)につながる日常の身体活動が減少していることが大きな要因のひとつであることは間違いないでしょう。ロコモはメタボにつながり身体リスクはますます高まることになります。

 文科省は運動器教育の導入を検討しているようですが、ひょっとすると、これは身近な大人を見ながら育った結果なのかもしれません。
 現実を冷静に眺めると、子供の親や教員も、子供と同様、姿勢改善をはじめとしたロコモ対策が必要な状況にあるのではないでしょうか?
 「隗より始めよ」という言葉がありますが、子供たちを導く立場である大人が、自身のことに気づいて改善していくという自覚と行為なしに、子供たちばかりに結果を求めることには無理があるのかもしれません。

2014年7月25日金曜日

トリックモーション(14.07.25)


 今でも、週に1~2回ジムに通っています。
 学生時代はとにかく重い物を持ち上げようとしていました。振り返ると無茶なトレーニングでした。
 恐らくその影響だと思いますが、上部胸椎に慢性化した違和感が今でも残っています。ヒップを浮かせて行うようなベンチプレスは、昔から行ってはいませんでしたが、骨盤を右方向にローテーションさせるクセがありました。当時は全く気づいていなかったのですが、この動きのクセが胸椎の痛みに繋がったと考えています。注意してみなければ分かりづらい、比較的小さなトリックモーションだったためか、人から注意されたこともありませんでした。 気がついたのは「バランス」や「動作改善」に興味を持ち探求を始めた頃なので、その小さな?クセを数十年間放置していたことになります。「雨垂れ石を穿つ」という言葉がありますが、微細なダメージが蓄積していったのでしょう。


 小さなものから大きなものまで、トリックモーションはどこのジムでも横行しています。大きいものは分かりやすいですが、見逃されてしまう可能性が高いであろう小さなトリックモーションの方が、リスクがより大きいといえるのかもしれません。 
戦略的に行う場合もあるのですが、筋骨格系のバランスを崩し将来に禍根を残すような動作方法は戒めなければなりません。
 健康づくりの場で、健康を損ねるという不幸。
 これは何としても避けなければなりません。
*トリックモーション: ごまかし運動のこと。ある運動を行うとき、主役となる筋肉が弱かったり、関節に何らかの障害がある場合などで、サブの筋肉(補助筋、協同筋など)が過剰に働き、見かけ上は、同じような運動がなされる現象。